理事長所信
一般社団法人牛久青年会議所
第33代 理事長 一石 肇
<はじめに>
青年会議所に、地域の未来や世界平和を目的に入会する方は極稀ではないだろうか。入会目的はそれぞれ違い、自身の仕事の為、自らのスキルアップの為に入会する方がほとんどだ。私もその一人で、2007年にある方からの勧めで「地元で仕事をするなら青年会議所に入りなさい」と言われ、牛久青年会議所に入会した。当時26歳の私は社会問題、政治の問題、ましてや住み暮らすこのまちの問題にも興味は薄く、自身の従事する業界にしか興味は無かった。しかし、入会して先輩方の本気でまちを考える姿勢、地域の大人として次世代を想い語り合う言葉には重みがあり、先輩を見ていると本当にまちが良くなるのではないかと思えた。背中を追いかけても届かないような先輩たちを、心から尊敬し憧れた。歳も離れていない同世代の会員達が、本気でまちづくりや政治を語っているのを目のあたりにし、自身の世界の小ささを思い知らされた。
入会から11年、以前は考えられなかった、まちの未来、地域が抱える課題はもとより、政治や社会の問題についても真剣に考えるようになった。青年会議所との出会いが無ければ、私は未だ小さな枠の中で、そのことにすら気づかず、生きていたのかも知れない。入会目的が仕事の為だったはずの私は、青年会議所運動を続けている理由は生まれ育ったこのまちに恩返しをしたい、その為に青年会議所運動を続けている。入会目的と続けている理由が変わるのはこの組織だけではないだろうか。この組織に出会えたことに感謝するのと同時に、この組織にプライドを持つようになっていた。いつの世も時代を切り開いてきたのが青年であるのならば、今一度、私たち青年がこの混沌とする世の中で、住み暮らす地域のために、失敗を恐れず果敢に、何がどこまで出来るか追求していきたい。
様々な問題を誰かのせいにして諦めることはもう終わりにしよう。誰かに頼るのではなく、自分に何ができるかを考えよう。地域の現状を把握し、様々な問題や課題に着目し、解決策を見極め行動する。そして、まちに対する自信と誇りを持ち、一人ひとりが牛久青年会議所の一員としてプライドを持って行動することが、明るい豊かな社会の実現の一歩になるはずだ。
<まちづくり>
牛久市は都心から約50kmという距離にあり交通の利便性が良いことと、ひたち野うしく地区の人口増加に支えられ、今まで人口減少を一度も経験していないまちです。現在、牛久市の人口は85,000人を超え、とても住みやすく他県からの移住者も多いまちですが、税収は減少の一途を辿っています。原因の1つとして2008年から開始されたふるさと納税制度が挙げられます。2016年度で言えば、他市からの牛久市に入る寄付金が約3,500万円に対し、牛久市民が他市へ支払った寄付金の控除額が約6,700万円となっており、返礼品の金額を合わせると、約5,000万円の赤字となります。ふるさと納税制度の導入で寄付金受け入れ額より控除額や返礼品にかかる金額が大きい場合、本来実施できたはずの子育て支援や公共サービスが実施できない事態となります。
本年、公益社団法人日本青年会議所でも、地域で生み出される産品や自然、風景などを地方自治体の持つ価値にプレミア感をもたせ、地域ブランドの価値化を目指しています。私たちが、牛久市の多くの特産品や豊かな自然環境、観光資源を活かし、地域ブランド化を実現させることにより、市の財源が潤うだけではなく、子育て支援が充実し、高齢者をサポートできる、明るい豊かな社会の実現に繋がると考えます。また、事業を構築するにあたり、市民がまちづくりに参画できる場を青年会議所が提供する必要があります。「本当はまちのために何かしたい、けど一人では何をしたらいいのかわからない」そんな考えを持っている市民もいるのではないでしょうか。市民を巻き込み事業展開を行うことで、市民の意識を変え、未来の為に自分たちでまちを育てるという意識を持って頂くことが重要だと考えます。私たちの行うまちづくりは、自分たちの考え方だけで進めていくものではありません。地域の現状をしっかりと把握し、行政、市民、諸団体と共に行うまちづくりを構築して参りましょう。
<人材育成>
1990年代から続くデフレ不況は未だに脱却できず、アベノミクスの恩恵を感じているのは大手企業に留まり、中小企業の大半はまだまだ景気回復を感じられない状況が続いています。また、人口減少に伴う人員不足など様々な経済問題があります。そんな経済状況の中でも青年会議所活動を行っていくには、まず私たちが強くなければいけません。私たちはJAYCEEであるまえに青年経済人であり、各々従事している会社を存続発展させる事が求められます。青年会議所活動を続けていくにはまず会社が元気でなければなりません。私たちが経済人としての資質を向上することは、会社の発展だけでなく地域の発展へと繋がります。そのためにも経済人としての資質を向上する研修を行い、発信することが必要であると考えます。
また、青年会議所を続けていく中で、メンバーから家族に怒られる、社員によく思われていないなどの声を聴くことがあります。確かに私たちは時間をかけて事業を構築しています。仕事の途中で抜けることもあるでしょう。また帰りが遅くなることもあります。自分たちの日々行っている活動を身近な人に理解されないということは、相手が悪いのではなく想いを伝える努力が足りないのではないでしょうか。毎日の暮らしの中で、伝えたいこと、言いたいことをきちんと表現できているのか。私たちは青年会議所活動を行うなかで、各委員会に分かれ事業を構築していきます。事業を構築するにあたり、理事会での上程や行政、市民、諸団体に対して想いを明確に伝えることが出来なければ目的を達成することは出来ません。また、青年会議所は人前で話す機会も多くあります。想いを伝える力を身に着けることは私生活、会社においても必要なスキルであり、私たちが今一度学ぶべきことだと考えます。
<次世代育成>
インターネットが加速的に進展している現在、インターネットを上手く活用すれば情報収集等により、色々なことに関心や興味が広がり、活動の範囲が拡大するといった子供たちへの好影響があります。その一方で、インターネット上の匿名の書き込みによる誹謗中傷やいじめなど、従来の子供の身近にはなかった問題が生じています。インターネット上でのいじめは外部から確認することが難しく、お互いが接していない状況で相手の表情を見ることなく書き込むことができ、学校以外でも続く為、精神的にも追い詰められてしまいます。インターネットが原因でいじめや不登校などの問題は後を絶ちません。その原因は、インターネット上で物事を解決できるため、人間関係の希薄化やコミュニケーション不足があげられます。自分以外に対しあまり興味を持たず、自己中心的で相手の立場になって物事を考える力が低下しているように感じます。相手の立場になって物事を考えるということは、自己を高める意味でも、子供たちの心を豊かにする意味でも、当てはまることです。生きてく上で家族、友人など、人との接点なくして渡っていくことは出来ません。必ず常に人との繋がりがあります。インターネットの普及が悪いわけではありませんが、こんな時代だからこそ、子供たちに他者への思いやりの心を育ませることが必要だと考えます。
また、日本は豊かで何不自由ない生活を送れています。しかし、世界情勢の悪化により2017年8月29日Jアラートが鳴り響き日本の上空を北朝鮮のミサイルが通過しました。戦後、72年が経ちいつの間にか戦争や紛争が他人ごとになっていた日本人はサイレンが鳴り響いてもどうすることも出来ず、ただ待つしかない状況でした。しかし、世界では紛争に巻き込まれ何の罪もない子供たちが貧困に苦しんでいるという事実があります。その地域では、栄養失調や感染症などで亡くなる5歳未満の子供たちは年間350万人から500万人もいます。その数は、5秒に1人、1日にすると1万4000人にもなります。世界は1つに繋がっています。遠い国のことと思っているだけでは世界はいつまでも変わりません。青少年に国際社会が抱える問題に取り組ませる場を与えることが、恒久的な世界平和の第一歩となり子供たちの未来に繋がると考えます。
<会員拡大>
現在、会員数の減少は全国の青年会議所が抱える大きな問題です。牛久青年会議所でも2020年までに現在の正会員19名が卒業をします。現在、会員拡大に繋がらない要素の一つとなっているのが、オブザーブを通して青年会議所を理解して頂くことができない点です。オブザーバーが例会に参加して事業の内容を把握しても、懇親会でただ一緒の時間を過ごすだけでは青年会議所を理解して頂くことは出来ません。懇親会の時間を有効に使い、一貫性を持たせオブザーバーに1日を通して青年会議所の魅力や運動内容、目的を発信して参りましょう。また、在籍年数に関わらず、例会の内容は説明できても、青年会議所とは何を目的として運動している団体か、しっかりと説明できる人材が少なく感じます。メンバー一人ひとりが、私たちの行う運動を強く発信する為にも、本年は新入会員や入会から3年に満たないメンバーを中心に、国際青年会議所や日本青年会議所の理念や歴史を学び、私たちの運動の目的であるビジョンを共有し、青年会議所運動の基礎を身に付けるアカデミー向けの研修が必要だと考えます。会員拡大は会を存続するために必要なことですが、地域に寄り添う青年がいなくなることが一番懸念されることです。基礎を理解したうえでまだ見ぬ仲間に青年会議所の魅力を発信して参りましょう。
また、長年にわたり当会の運動にご尽力頂いた、本年度ご卒業されるメンバーに感謝の意を表すると共に、私たちの青年会議所活動を日々支えて頂いた家族や身近な方に感謝し、私たちの1年間行った運動を発信して参りましょう。
<環境問題>
現在、人類の課題となっている環境問題に対し、先進国を中心に様々な取り組みが行われています。地球温暖化により、降雨量の変化や異常気象が多発するようになり、植物への影響も大きく、森林の消滅や生物種の絶滅などが予測されています。今後、100年で最大6.5度の気温が上昇するといわれ、50年後にはアマゾンの森林は砂漠化するとの予測もあります。既に、インドでは海面上昇により住む場所を失った環境難民が都市部に集中し混乱を招いています。日本でも海面がおよそ1メートル上昇するだけでも、水没域の東京、大阪など都市部を中心に、大きな被害を受けることが予測されています。子供たちの将来の為にも、深刻化する地球環境問題の解決について、私たちが今何をすべきか考えなければなりません。
2008年人と自然の共生をテーマに牛久青年会議所が発足させた、うしくみらいエコフェスタは行政、諸団体と連携し昨年10周年を迎えることができました。開催から10年が経ち、うしくみらいエコフェスタへ参加して頂ける市民が増え、今もなお継続し開催できていることは素晴らしいことです。うしくみらいエコフェスタの目的は、参加者が環境問題に関心を持ち、身近なエコ活動に取り組んで頂くことです。多くの市民が来場して頂くうしくみらいエコフェスタを最大の発信の場とし、環境問題に対する意識変革を促して参りましょう。
<組織の円滑な運営>
私たちの運動を広く多くの方に発信する為には総務広報委員会が非常に重要な役割を担っています。私たちの活動をわかりやすく、また迅速に発信を行い、時代の流れに合わせた広報に力を入れて参りましょう。また、理事会の設営、会員名簿の作成、各スケジュールの調整管理、情報の記録、備品の管理、ホームページの更新など職務は多岐にわたり組織運営に欠かせない存在です。各委員会と連携を図り、会がスムーズな運営をできるよう努めて参りましょう。
総務広報委員会の重要な役割の一つに総会があります。総会は、私たちの年間事業計画や予算などを決める重要な場であり、多くの御来賓、来訪JCにお越し頂きます。年2回開催される総会ですが、総会を見ればそのLOMの在り方がわかるといわれるほど重要な場であり、総務広報委員会が中心となり気を引き締め厳粛に開催できるよう努めて参りましょう。
事務局では、正副理事長会議の設営、理事会での資料取り纏め、議事録の作成配信、対外事業のスケジュール管理などがありますが、特に注力して頂きたいのが対外事業の動員です。青年会議所では多くのセミナーや講演が開催されています。案内のチラシをただ配信するのではなく、内容をわかりやすく説明した上で、対外事業に参加して頂き、メンバーのスキルアップ向上に努めて参りましょう。
財政局は、年会費の管理、財政審査会議の設営、予算の管理、各事業の予算書の確認など会の財政管理という重要な担いがあります。財政審査会議では議長を務め、活発な意見が出るように進行し、予算書の不備を修正するだけではなく、予算に対しての費用対効果を考え、より良い事業構築に向けて参りましょう。
<結びに>
1986年の創立から32年、先輩諸兄が紡いで下さったこの一般社団法人牛久青年会議所は、行政、市民、諸団体から認知され、地域に求められる団体として活動して参りました。その功績に敬意を払い、伝統ある一般社団法人牛久青年会議所を継承していかねばなりません。愛する地域の為に、愛する人々の為に、そして、10年後20年後の未来の為に、今の我々が果たすべき役割は一人ひとりが何の為に、誰の為に行動するのかを常に考え、自分に与えられた役割を理解した上で、牛久青年会議所の一員であることにプライドを持ち、覚悟を持って行動していきましょう。